2018年06月
2018年06月28日
下北沢のチメ 奈美恵
メは梅雨の中休みの早朝に魔古来亭キッチンに立っていた。
久しぶりに雲のない空から朝日が柔らかく差しこみ、家の中はあまーい香りに包まれている。
チメは、ぼーっとしたままクッキーを焼いている。
TVには全米女子オープンゴルフが映し出されていた。
今日ご来店予定のお客様の人数を確認しながら、気が付けば以前よりもクッキーの種類が増えていた。
セレニーテ20周年を迎えるにあたり、ほんの感謝の気持ちでご来店いただいたお客様に差し上げ始めたクッキーがあまりにも評判なのだ。タラコもうまいうまいと声を大にしてしつこく繰り返すので、その気になってしまった。
チーズスティック、ベリージャムとマーマレードのロシアン風クッキー、マカダミアナッツ入りのシナモンクッキーなど、どんどん腕をあげている。
朝5時起きが続くのはちょっとつらいけど、お客様に感謝 感謝。
プラス、今年の一大イベント! 奈美恵のファイナルツアー東京ドームに向け毎晩遅くまで歌詞の確認にいそしんでいた。奈美恵にゴルフに調理と忙しくて寝不足が続いている。 そんな夜にタラコが急に、アマゾンプライムで映画を見始めた。
私の安室ちゃんに割り込んできて! チッ!
それが“ミリオンダラーベービー”。 はじめは面白く引き込まれたが、結末が・・・。
頭から離れず、そのおかげで寝つきが悪く目覚めもスッキリしない。そんなタラコはまだ起きてこない。
当たり前か、まだ5時だもの。
安室ちゃんといえば、今年の2月にタラコと2人で、福岡ヤフードームにライブを見に行ったことを思い出す。ライブを見て、もっと前からお店を休んでも行っておけばよかったと思うくらい楽しかった。
後悔が残る。
しかし思い返しても福岡はよかった。ライブはもちろんだが、 もつ鍋、鳥すき、かしわてん、トリカワ、ラーメン、餃子、うどん、海産物、 美味しいもの!そして日本酒!
洗礼された日本一おしゃれな街とファショニスタ達。都心からすぐの雄大な自然。
そして何よりも温かい人!
天神近くの川沿いにある日本酒のバーで出会った俳優の山田孝之似のイケメン君。
人なつっこく、彼は仕事で取引先の接待で飲みに来ているのに、早々に先方を送り出し、すぐにお店に戻ってきて深夜3時まで一緒に飲んだ。
すると次の日?というか朝に連絡があり、ランチに誘ってくれてご一緒した。
福岡の人の温かさを知った旅でした。
もしくは、ただ山田君が“なつっこい”だけかもしれません。
そして、安室ちゃんは東京でファィナルを迎える。
感慨深い。
そういえば福岡ライブ後に号泣しているタラコをみてあっけにとられていたチメに、
「なんで泣かないの!」と強要していた。そして昨夜のDVDをみて振り付けを確認しているチメの隣でもまた号泣していた。
オジさんってなんでこうも涙腺が弱いの?
まったく、世話がやける。
そんなことを考えていると、TVでは最終ホールでプレーオフが決まった場面だった。
時計を見た。そろそろタラコを起こさないと。何かつらそうな顔をして起きてきた。
どうやら筋肉痛のようだ。
昨晩の映画の内容がボクシングだったので、最近怠けていた腹筋ローラーをガンガンやっていたからだ。
それは多分、映画の影響だけでなく、チメがいつものようにボディービルダーのポージングで6つに割れた腹筋を見せつけていたからに違いない。
そうご存知のように、チメの体は筋肉質である。
流行りのクロスフィットトレーナーのAYAさん張りの上腕二頭筋、“クッ”とあがったヒップ、そしてクリスチアーノ・ロナウドばりのシックスパック!
余計な脂肪など皆無で体脂肪率がアスリート並み!
もう少しでマラソンランナーと同じくらいになってまいそうなのだ。
これは、ガリガリで少しでも筋肉を付けたいタラコには屈辱的である。
それで頑張りすぎてこのありさま、フフフ・・可哀そうに。
今日こそは、お茶も出来上がっているし、タラコさんにもっていってもらいましょう。
先日など、出かけにもっていってとお願いしていたのに、見事に忘れていきやがる。
絶対わざと!?
何やら最近、タラコは暇を見つけては、チメのことを題材にブログにノンフィクションのお話を書き始めている様。本人は、ハードボイルドを目指しているようだが、どうだか。話の展開などはまあまあ面白いのだが、なにせ日本語が苦手なものだからチメの校正なしには文章が成り立たない。大幅に修正されたのがショックで腹いせにわざと置いて行ったに違いない。イラッ。
タラコがどんなに嘆こうとチメが手直ししたほうが面白いからね。へっへっ。
そろそろ出かける時間になった。
昨夜みたウェザーニュースによると午前は晴れ夕方から豪雨の予報。
魔古来号で出動できるかしら?
雨続きだったおかげで魔古来号のチェーンがギコギコと音がなっている。
ヤバイ状態のまま昨日はタラコが三軒茶屋に行くのに魔古来号を使った。
非力で坂を上がれなかったと嘆いていた。ちょろいわね~。
チェーンにオイルだけは差しといたからって、恩着せがましく言ってたけどどうせなら自転車屋に持っていてくれればいいのに。
いけない、いけない。いつもの時間より10分ほど押してしまった。
混んでくると、お気に入りの席がなくなっちゃう。
急いでカフェに向かわないと。
さて今日はどんな人に出会えるかな?
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2018年06月27日
色々。再会🦌
2018年06月21日
焼岳へ。⛰
2018年06月18日
下北沢のちめ 憂鬱
ここ最近は雨の日が多くなってきた。
チメ子はいつものカフェでモーニングを食べながら物思いにふけっていた。
あ~梅雨は嫌だ! 髪の毛はまとまらないし、足元が気になりレインブーツをはかなきゃいけないし、なによりも魔子来号に乗れないのがイラッ!
移動に時間はかかるし荷物は重い。
チメ子はデトックスのために飲んでいるパキスタン産のジールというお茶を、毎日2リットルのサーモスに入れてお店まで運んでいる。毎朝鍋でグツグツと煮出すのだが、けっこう時間がかかり、先に出勤するタラコに持たすことができない。重い!
でも体調&体形キープのためにもこのお茶はやめることができないのだ。
さらにここ最近チメ子は睡眠不足。
なぜなら、セレニーテの20周年を迎えるにあたり、お客様へのささやかな感謝の気持ちとして手づくりクッキーを毎朝5時に起きて焼いているから。
はじめは3日間と思っていたが、タラコがうまいうまいというし、お客様の喜ぶ顔を見ているとやめられず1週間になる。
でも、タラコのうまいは何か怪しげ??
私が安室ちゃんのライブTシャツをファイナル前にもう一度お洗濯し、綺麗に畳もうとしたら、なんだかいつになく毛がいっぱいついている!!
どうやらタラコがお店で着ていた“毛だらけ”の服を一緒に洗濯したからだ!イラッ!
確認してから洗濯機に入れてと言っているのに。
あのしつこいまでの美味しい発言はご機嫌取りに違いない。
タラコは世話を焼かせる。 思い出してしまった。
シナモンのクッキーがお気に入りのようでバクバク食べていたわね。
まあいいでしょう。
あ~私のハワイの心地よい風を返して!などと嘆きながら耳まできれいにバターが塗られたパンを咀嚼していると。
「いらっしゃいませ!」
カフェの入り口ドアが開き「空いてる空いてる、いつもの席あいてるよー」という声とともに3人が入ってきた。
1人は男性で50代以上。細身の派手なストライプのパンツを穿き、少し元気がなくなった長めの髪をかなり明るめに染めている。あれはどう見ても美容室のオーナー。
長年の勘で同業者はひと目で分かってしまうのだ。
後の2人は、美容師とは思えない妙齢女性。
3人は喫煙席の少し奥に座った。
お店のお客様? 仲良さそうな感じだからよっぽど長年のお客様なのかな?
興味津々とチメ子は耳をピクピクさせながら、残りのパンを小さな口に放り込んでアイスコーヒーで流し込んだ。
美容室のオーナーはかなり砕けたかんじでおしゃべりしてる。
「○○ちゃんは、どんな雰囲気にしたいの?なんか希望ある?」
すこし若いと思われる女性が答えた。
「私は普通に白っぽくて清潔感がある感じならそれで。先生の趣味とだいぶちがうけど。」
先生って呼ばれてる。ってことはあのオーナー60才は越えてるかもね。
髪型の話じゃない。
お店の一角を仕切って何かするって話だ。
マッサージ?いやあの人の感じからすると、なにか占い的なものに違いない!
ということはあの人は占い師。
なんの占いかしら?
下北沢には、路上の占い師さんも多数いるし、カフェに占い師さんがいるところもあるし珍しくはないけど。俄然興味が湧いてきた!
皆さんご存知の通りチメ子はタロットの使い手。タラコは魔法使いと呼んでいる。
そしてチメ子は、ディズニー映画「ダンボ」に出てくるネズミのティモシーのようにさらに耳を動かしている。
チメ子は嫌なのだが、タラコが似ている似ていると言う。
もう少し話を聞きたいけど、ちょっとお腹が痛くなってきた。
ここでタイミングを逃すと・・・・。
いまならお手洗いも空いているし大切な朝の儀式である。
これが滞りなく済むのと、すまないのでは、一日を通してのパフォーマンスに影響がでる。
今日はありがたいことに終日お客様がいらっしゃる。ここはしょうがない。
後ろ髪を引かれつつお手洗いに向かった。
このカフェのお手洗いは構造が少し変わっている。
女性用が左側で男性用が右側。女性用個室の外には専用の洗面台がある。
何故か女性用の洗面台はお店の中からよく見える位置にあり、男性用お手洗いの方が奥にあるのだ。
男性は女性用洗面台を横目で見ながらトイレに向かうかんじ。普通逆でしょ?
個室の中は綺麗でかなり広い。とりあえず他にすぐにお手洗いに立ちそうな女性がいないことはぬかりなく確認してある。ゆっくりスッキリできそうだ。
しまった今日はオールインワンのパンツスタイルでしかも上着を着たままだった。
大好きなオールインワンだけどお手洗いの時は大変。
少し慌てながら上着を脱ぎ、背中のファスナーを下ろそうとしたタイミングで足音が聞こえドアの外に人の気配が!
どうやら洗面台の前で順番待ちをする気ね。まじですか。
これじゃ落ち着いてすっきりできない。自分の入ったあとのお手洗いにすぐ人が入ってしまうのはあまり気持ちよくないし。
しょうがない、あきらめよう。
イラっとしつつ下ろしかけたファスナーを上げ、上着を着直しドアを開けた。
そして洗面台の鏡越しに目が合ったのは、なんとおっさん!
女性用の洗面台で鏡をみつめるおっさん。なんだ?このおっさん。
女性トイレマークがわかんないわけ?
チメ子は思わず「えーーーーっ!!」と思い切り声に出して抗議の気持ちを表現した。
そしてもう一度個室に入り直し盛大に音を立ててドアを閉めた。
ちゃんとスッキリし直すのだ!!
なんだ、あいつは。間違えるような年齢でもなかったよね?
あれ確信犯?洗面台使うだけだからいいと思った?
いや、それにしてもデリカシーないでしょ。あとで睨みつけてやる。
いやー!! せっかくの面白そうな話を聞くのを中断してお手洗いに来たのに、余計に時間を取られてしまった。
最終的にはスッキリできたから良かったけど。
お会計の時にさっきのおっさんを見つけた。お会計の間も店から出る間もお店の外からもずーっと睨み続けたが、おっさんは気づかぬふり(多分)でテーブルに置いたPCの画面を見つめ続けていた。やっぱりあれは確信犯だ。謝れ!
このカフェは下北沢の色々な人が集う場所で面白話が聞けてお気に入りだが、男女の洗面所の位置を逆にするべきだ。と、チメ子は声を大にして言いたい!
作 タラコ マコ
校閲 マコ
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2018年06月07日
下北沢のちめ 魔古来号🚲
今日も爽やかな朝。
昨日の夜は少し肌寒かった。最近気温の上下が激しい。チメは天気に敏感である。
そういえば、またタラコがお客様に「最近温暖差が激しいですね」などと言っていた。
お客様には意味は通じているのだろう。微笑みつつ耳を傾けてくれている。
タラコは日本語が苦手だ。
昨日の夜も「チメ」では飽き足らないのか「チネ、チネ」と呼び始めた。
今度はどこから取ったのやら、意味の分からないニックネームが増えて行く。
そうチメは沢山の名を持つ女。
愛車の青い魔古来号(まこらいごう)を出して、セレニーテに向かうためペダルをこぎはじめた。ちなみに魔古来も旦那がつけた。マコと、魔女と古来を合わせたらしい?
漢字は初めてみる!?
朝からしょうもないことを考えながらも、きっちり減速して住宅街の角を曲がった瞬間!
危なぁーいっ‼ 小型犬が出てきた! し・か・もリードをつけてない! なんでーーっ?!
なんと、飼い主の年配男性は少し離れた後ろをのんびりと歩いている。
呆れ顔で男性と犬を交互に見たが、どこ吹く風でチメの視線を気にも留めない。
「チッ。轢いちゃったらどうするのよ!」口に出さずに毒づいた。
最近こんな輩が多い。いくら住宅街でも、ノーリードで犬に前を歩かせている飼い主のモラルを疑ってしまう。下北の街中でもたまに見かける。
きっとわんこの排泄物も放置しているに違いない。手ぶらだったもの。
このことを先にセレニーテに行っているタラコに報告しなきゃ。
チメは北沢から少し坂を上がった代沢の住宅街に住んでいる。この坂が地味にキツイ。
タラコは10分程歩いて店まで通っている。
朝は下りだから気持ちいい。(帰りの登りがキツイけど)
朝の爽やかなハワイのような空気を感じながら魔古来号で走ると嫌なことも忘れてしまう。
そうチメはハワイが好き。
気分よく下北沢の商店街を颯爽と駆け抜けていく。
そうそう、最近下北でもガラガラを引いた外人をよく見かける。
あれも集団で歩いたりするから結構邪魔なのよねー。
そういえばタラコがお客様に「下北沢も西洋人増えましたねー」って言ってた時期があったな。あんたは江戸時代の人か?
優しいお客様は笑顔で相槌を打ってくれていたが、あの笑顔は受けてただけなのかもね。
タラコは日本語が苦手。何度か注意して、最近はやっと西洋人とは言わなくなった。
あれこれ考えているうちに、ビレバン前に到着。
もちろん自転車撤去の日にちを確認してから、自転車にチェーンを掛ける。
もしまた撤去されたら、今年になってから4回目になってしまう。
いくら保管場所が梅ヶ丘で近いとは言え記録更新はしたくないし、ゴルフの練習に行くのに不便だし、時間がもったいない。
というわけで駐輪には細心の注意を払っているのだ。
そして、今朝もまた下北沢のディープな方々が集うカフェへの階段を降りていく。いつもの顔が居るのを確認した後、NO.1に先客が座っていたため、お気に入り席NO.3に座った。
新米店員さんがタイミングよくオーダーを取りに来る。
Aモーニングを頼み、昨日のゴルフコンペのスコアをチェックしながら心の中でボヤく。
ここ最近の寒暖差のせいで、読みが外れうまく服装の調整ができなかった。
おまけにスコアはいまいち。
こまめにウェザーニュースはじめ3つのサイトでゴルフ場の天気をチェックしているのに。
おもいだした、昨日私がせっかく開いておいたウェザーニュースをタラコが閉じていた。
パソコンが共有なので仕方ないか? 待てよー買ったのは私。
タラコは時々めんどうを掛ける。
「まったく・・・・。」
ア!いやだ、こころの中で呟いたつもりがついつい声に出てしまっていた!
幸いにもとなりの席は空いていた。
気をつけないと、あだ名が、'つぶやくバターおばさん'に、オプションを追加されてしまう!
そうこうしていると、新米店員さんがモーニングセットを笑顔で運んできた。
「お待たせ致しました。」
よしよし、新人さんも慣れてきたし、今日のバンの焼き加減にバターの量は合格よ💕
チメがいつも座る一番お気に入りの席は、入り口を背にした壁際の席。
周囲の目を気にせず、心おきなく自分のスイング動画をチェックできるのだ。
今日の席は3番だけど店全体が見渡せるし、お手洗いが空いているかもチェックもしやすい。
いざ(?)というときに迅速に逃げやすい場所でもある。
今朝はノーリードのわんこにびっくりしたが、ここまではスムーズにルーティンをこなしている。
チメは、この毎朝のカフェで過ごす時間を大切にしている。
いい具合にバターが塗られたトーストを咀嚼しながら、来月予定している友達ファミリーと行くゴルフ場の予約を確認していた。平日なのに込み合っている。やはり5月はトップシーズンね。幸いにも9時30分スタートに空きが出てるから、とりあえずキープしましょう。
チメは毎週ゴルフに行く。
「いらっしゃいませ」2人組のお客様が入ってきた。そしてチメからよく見える席についた。
男女の、カップルではなさそうな下北沢には似合わない様相。
男性は、40歳前後で肌は浅黒く体格が良い、今時珍しい長めの髪型。体格に不釣り合いな細身のスーツで、座ってからもやたら腰をくねらせ足を組み直している。
「なんかキモイ」さらにしゃべる声が、酒焼けしてしゃがれている割には甲高い。
そのくせぼそぼそしゃべるので聞き取りずらい。ちょっと耳障りだ。
「なんかイラつく」 チメの嫌いなタイプだ。
女性は、20代後半?ばっちりメイクに、綺麗に染まっているとはいえないベージュの胸まである髪をかき上げている。服装は、派手な柄のワンピース。あんな洋服どこで?ケバイしこの時間の下北には不似合いだ。
声はハリがあり、良く通る。でもしゃべり方はぶっきらぼうでだるい感じ。
よく見ると30歳超えてる?
新米店員さんがオーダーをとりにきた。
男が「コーヒーふたつ」
店員さん「ホットコーヒーをふたつでよろしいですね」
男「****」
店員さん「?・・ はい、少々お待ちください。」
「おまえが腹に力入れてしゃべらないから店員さんに聞こえづらいんだよ!」と心の声。
このセリフ、以前セレニーテの社員旅行をオーバーブッキングさせた、旅行会社の仕事のできない若い社員を思い出させる。
“上司を出せと”言っているのにその場を何とか取り繕おうと、ぼそぼそとしゃべっいてた。
頭にきて「腹に力入れてしゃべりなさい!」と叱りつけた声が大新ビルの外階段に響きわたった。びっくりしたタラコがお店の中から顔をのぞかせていたわね。思い出してしまった。
店員さんきびきびと厨房にむかう。
「頑張って。」またも心の声。
男は煙草を吸いながら「早速、はじめ****」
女「はい」こちらも煙草に火をつけながら。
いっきに店内がもくもくしてきた。
あー、髪の毛と服が臭くなってしまうじゃない!!
またタラコに人の匂いをくんくんと鼻をひくつかせてかごうとされてしまう!!
「いやだ!」といつも言っているのに。
タラコは、チメの香りをかぐ。
異質な二人の会話は、図らずも耳に入ってくる。どうやら仕事の面接らしい。
なんの仕事?
待機時間がどうとか・・・。何を待機するんだろう?
読書しながらも二人の会話が耳に入り気になってしまう。
面接というよりもほぼ仕事内容の確認というかんじ。
男は早々に「連絡する」と言って立ち上がり、伝票をもってレジに向かった。
なんの面接かは、はっきりとはわからなかった。
女は残ってコーヒーを飲んでいる。
しばらくして、電話で話し始めた。
「今終わった」
「え?」「騒々しいわね、まだ飲んでるの?」
「え?」「うるさくて聞こえない」
今の時間は、朝の8時30分。
こちらにはよく聞こえるよー。腹から声出ているねー。
どうやら彼氏かね。バイトの面接にきて彼に報告しているところ。
「 完全歩合だって。でも待機時間けっこうあるかも。」
しかし何のバイト?
「一客につき、*****円」
「え?安い!そうなの?」
接客業かしら?歩合?どう見ても美容師ではない。
「いらっしゃいませ」
常連のみっちゃんのご来店。
相変わらず、派手! 杖を突きながらいつもの席に向かっていった。
面接女はそのうち電話の向こうの彼と痴話げんかをはじめた。
エキサイトしすぎて自分の声が店内に響き渡っていることにも気づいていない。
あーあ。本人のディープな仕事も、一緒に住んでる彼氏がホストであることも全部丸聞こえ。
シングルマザーでどこか地方の実家に子供を預けていることも。大変な人生なんだね。
聞きたくもない話を聞き、知りたくもない職業を知ってしまった。
しまいに彼女が「馬鹿にしないで、ザッケンナ!」と怒り狂っているところに
バッテリー切れか電話が通じなくなったらしい。それとも相手が切ったのか。
「もしもし!もしもし!・・・・・もしもしっ!!!!」
1人叫ぶ彼女の声が虚しく響き渡る・・・・。
私の大切な朝の空間で、そんな面接しないでー。そんな痴話げんかしないでー!!!!
ここは、下北沢の色々な輩が集うカフェ。
作 タラコ マコ
編集 校正 マコ